建築設備の主治医
柳原さん、本日はよろしくお願いします!早速ですが、まずは事業内容について、教えてください。
よろしくお願いします。
弊社は、建築設備に特化した「設備専業設計事務所」です。
電気・空調・給排水設備などの計画・設計・監理業務と、新築・改修問わず省エネルギー支援のコンサルティング業務を行っています。
どんな建築物に携わることが多いのでしょうか?
病院・大学・研究施設など高度な専門性を備えた建築物の実績が多いです。
具体的に医療の領域では、地域医療の中核を担う特定機能病院や災害発生時に重症・重篤な傷病者の救命医療を行う災害拠点病院において、術中MRIシステムやハイブリッド手術など高度医療機器を備えた手術室や、災害時の医療継続を支える電力・通信、空調・給排水設備の冗長化、感染制御に寄与する空調換気システムなど、特殊性の高いニーズに応えています。
こういった大規模病院の他にも、大学や図書館といった文化・学術施設や、半導体研究施設、動物実験施設、オープンラボ(多用途に使える柔軟性のある実験施設やイノベーション創出の基盤となる産学官連携施設)など、多様な先進的教育研究環境も実現しています。
近年、自然災害の多発や、カーボンニュートラルなど、時代の変化によって様々なニーズがあると思いますが、そういったことにも応えていますか?
はい。自然災害でいうと、事業への影響を最小限にするための環境整備は、どの建物にとっても重要課題です。 弊社は、コンサルタントとしてBCP(事業継続計画)対策の立案・計画の支援も行っており、災害を想定した設備改修のニーズにも応えています。
なるほど。具体的な案件のエピソードを教えてもらえますか?
災害対策拠点となる、とある主要都市の庁舎を改修した時の話をさせてもらいますね。 そこは築30年超の建物で、電気設備が地下にあるため、このままでは万が一水害が起こった際に水没し電源を失う恐れがある。それを回避するにはどうすれば良いか?という相談を受けました。
水没しない位置に電源設備を構える方法はいくつか考えられましたが、庁舎全体の災害時電力の確保と庁舎を使いながらの整備には、数々のハードルがありました。基本設計、実施設計、現場監理という手順を踏んで、既存建物では珍しい「屋上に大容量のバックアップ電源設備を設置し、万が一の時にはそこから建物内へ電力を供給する」という手段を取ることにしました。
既設の建物固有の、限られた敷地条件や構造条件の中で、庁舎の機能を止めずに計画修繕をしていくのは難易度が高いのですが、無事、庁舎機能を継続させながら、屋上への発電機更新と、燃料備蓄の増強を実現させることができました。
私たち設備設計者の強みとしては、もちろん新築建物のニーズもありますが、このような改修の際に、施設の再構築や新しい価値を生み出すことにもお役に立てるということ。自由に考えられる新築建物に携わることはもちろん面白いですが、反面改修となると、制限がある条件の中で課題を解明していく必要があり、新築とはまた一味違う面白みもありますよ!
そうなのですね!新築にも改修にも必要な設備のお仕事は、幅が広くやりがいを感じそうですね。
そうですね。
ただ、私たちの仕事は、建物が完成してからも続きます。
例えば、建物が完成した後に実際に使ってみて、その運用段階で様々な改善や調整を行う必要があるので、そのノウハウが社内で共有できるようになっています。
それを通して、より良い提案ができるようになっているのです。